四季折々の植物が見られるリトアニアの七月の主役はセイヨウシナノキだ。リンデンやライムブロッサムの名でも知られる。大きな木に無数の小さな薄黄色の花が咲く。蜂蜜の蜜源でもあり、その蜂蜜の色は白っぽく、味わいも柔らかいな甘みだ。街路樹として街中にも多く植えられており、花の季節の道路は蜜でベタベタになるほどだ。リンデンの花は苞葉ごとハーブティーとしても用いられる。多くのリトアニアのハーブの効能と同様、風邪に効くと言われている。蜜を多く残した花の方が美味しいので、ハーブティーのための花の収穫は蜜蜂との競争だという。苞葉はプロペラの役割となり、その実はくるくると回転しながら落下する。風が吹くと小さな妖精が空から舞い降りてくるかのようだ。かごに山盛りに集められたリンデンは、苞葉はひらひらとしていて小さなリボンのようにも羽のようにも見える。
背が高く育つリンデンの幹は柔らかく雷を受け止め穏やかに避けるので、人々の暮らしを守るように家の周辺や街路樹として植えられるようになったのだと、My Cup of Teaのアウスラさんに教えてもらった。加工もしやすくキッチンツールなどの材料に適している。暮らしに寄り添い、人々の生活を守ってきた樹木なのだ。リトアニアの民俗的な世界観において、リンデンは女性を表す。リンデンの木の大らかな佇まいに家庭を守るしなやかで強い女性像が浮かぶ。リンデンはリトアニア語でリィエパ(liepa)、そしてリンデンの花咲く七月もリィエパ(liepa)という。そのことを知ってからというものの、リィエパの音の響きはリトアニアの短い夏の訪れと香りを思わせるようになった。
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